Somewhere in the world 〜不真面目社畜の徒然日記〜

ビジネスと旅行と、時々宗教

「18歳で東京にでてきて、一人暮らしを始めたこと」の意味  -孤独と、多様性の中の相対化-

ちきりんさんのブログの最新エントリで、ご自身の「人生報われたランキング」を発表している。そこでダントツ1位が「18歳で東京にでてきて、一人暮らしを始めたこと」と書かれている。

d.hatena.ne.jp

 

これには僕も激しく同意した。僕自身も高校卒業を期に、18歳で上京して一人暮らしを始めた。実は今年でちょうど上京10年目を迎えるのだが(て、年がばれてしまった・・・まぁ、誰も興味ないからいいんだけど)

上京してからの10年をぼんやりと振り返っていたが、やはり「上京」が僕にとって今までの人生で最も重要なライフイベントだった。

「18歳で東京にでてきて、一人暮らしを始めたこと」の意味は何だったのか。

それは、自分の価値観がとてつもなく広がり、自分だけの人生を生きようと思えたことだった。

 

なぜ上京したのか

僕は幼稚園から高校まで関西のとある片田舎で過ごした。

海外に行ったこともないし、自宅からチャリで行ける範囲が僕の世界だった。

高校は地元志向が強く、ほとんどが大阪、京都の大学に進学した。

そしていつかは地元に帰り、家庭を築き、また子どもが地元で育つ。

そんなライフサイクルが成り立つ小さな街だった。

でも僕はいつしか上京を志すようになった。

父親が一時期東京で単身赴任していたから、まわりの友達よりも東京が身近にあった。

それに、中学高校と多感な時期に9.11のテロ、イラク戦争をテレビで見て、「世界では今も戦争をしている。こんな片田舎でのんびりしていていいのか。もっと広い世界に意飛び出した方がいいんじゃないか」という漠然とした危機感がわいてきた。

東京という新天地で、新たに自分の人生を始めたかった。

 

上京してどうだったか

同級生はみんな関西の大学に進学するものだから、誰も知り合いがいない東京に一人で出てきて、6畳一間の小さなアパートで一人暮らしを始めた。ここから人生が大きく変わり始めた。

まず、一人何とかで生きないといけないことを痛感した。

当然家事全般は自分でやる。何を食べて飲むか、どんだけお金使うかも(仕送りの範囲内だけど)自分次第。

まだ上京したばっかりで友達もいない時、僕は台所で野菜を切っていた。

ここでふと思った。「もし手が滑って自分の脈を切ってしまったとしても、誰も気づいてくれないんじゃないか?そしたらこのまま僕は死ぬんじゃないか?」

その瞬間、ぞわっと背筋が凍った。生とは対極にあるはずだと思っていた死が、いつやってきてもおかしくないことに気づいた。

死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。

-村上春樹ノルウェイの森

 

1000万人以上の人口を抱える大都会東京の中で、アパートの一室にいた僕はあまりにも孤独だった。「手を滑らせて脈を切らないように用心しなければならない。もし切ったとしても、何とか自分で助けをよばないといけない。さもなければ、死に飲み込まれる」

この孤独感と、一人で何とかしないといけない覚悟は、田舎から上京しないことには得られなかった。

(結果、村上春樹にハマったわけだが・・・)

 

そもそも広い世界に飛び出したくて上京したわけだが、めちゃくちゃ広がった。

東京にある大学に進学したんだが、まず標準語にびっくりした。そもそも自分は「標準語ではない方言の関西弁」を話していたのだった。標準語との出会いは、自分を相対化する出発点だった。 

 

今まで日本から一歩も出たことなかったのに、大学進学後は狂ったように海外に行った。旅行だったりボランティアでアジア・ヨーロッパ・アフリカを回った。アメリカには一年間留学する機会を得た。

それまでは日本の一方言でしかない関西弁コミュニティにしかいなかった僕が、多くの言語圏を旅したわけだから、価値観がぐっと広がった。

 

フィリピンの漁村では「1日1ドル以下で暮らす」という統計でしか知らなかった貧困のリアルを見た。(もしくは、「見る」ことしかできなかった)

アメリカ人に「アメリカでは原爆が正当化されてるなんておかしいよ!」と議論をふっかけたら「そもそも君たちがパールハーバーで始めた戦争だろ?」と切り返され何も言えなくなった。

イギリスで会ったスペイン人となぜかドラゴンボールネタで盛り上がった。

ラオス人からはあんまり生き急がなくても幸せな人生を送れることを教わった。

 

どれも、自宅のまわりをチャリで走っているだけでは出会えない世界だった。

そして、その世界は多様性に満ちていた。要するに、「みんな違ってみんないい」ということだ。

いつしか「多様性の中に身を置くこと」が己の人生のテーマになっていた。

さらに、多様性の中で自分を相対化させることで、自分の価値観が限りなく広がっていった。

上京して、自分は関西人であることを知った。

フィリピンやタイでは、自分はアジアの中で先進国の日本人だった。

ヨーロッパやアメリカでは、彼らの前では僕はまずアジア人であり、次に日本人だった。

 

みんな多様で、みんな違う。その違いを尊重しなければならないと学んだ。

また、自分も多様性の一構成要素でもある。だから、自分も他と違っていいと気づけた。この広い世界で、どう生きようがそれは自分の勝手なのだ。

 

結局、上京とは何なのか

長々と書いたけど、強引にまとめると、

  • 人間は究極的に孤独である
  • この世界は広く、多様性に満ちている
  • どう生きるかは、自分次第 

ということだ。

大海原をどんな船でどれくらいのペースで、どこに向かうのかは、自分の自由だ。

そう気づかされたのは何よりも「18歳で東京にでてきて、一人暮らしを始めたこと」のおかげである。

ちきりんさんは先のブログで「あのとき、18歳で東京に出てきたあの日が、私の人生の始まりだったと思ってます。」と述べている。

僕もそう。上京してから、自分の人生という航海が始まった。

 

地方上京組オススメの本

最後に、僕みたいに地方から上京した人にぜひ読んでもらいたい本を紹介したい。

・上京物語/喜多川泰

タイトルそのまんまだけど、上京する子どもにむけて、父親が人生を指南する本。

これから上京する人はぜひ。上京して10年たった人は、心えぐられます笑。

 

上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え

上京物語 僕の人生を変えた、父の五つの教え

 

  

 ・アルケミスト-夢を旅した少年

「上京物語」の巻末にも紹介されている本。一昔前にベストセラーになった。

最後まで夢を諦めない純真さを思い出させてくれる。さらに心をえぐられる笑。

 

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)