Somewhere in the world 〜不真面目社畜の徒然日記〜

ビジネスと旅行と、時々宗教

「悩みどころと逃げどころ」/ちきりん・梅原大吾〜人生に行き詰まっている人が救われるために〜

ちきりんさんの新作が出たということで早速読んでみた。

今度は世界最強のプロゲーマー梅原大吾との対談本だ。

 

教育、人生、仕事、幸せといったテーマについてバックグランドが対極の二人が議論を重ねている。

ちきりんさんは典型的な学歴エリートかつキャリアウーマン。一方で梅原氏は早々に学歴レースから離脱、悩みもがき苦しみながらゲームの世界で勝ち続けている。

ちきりんさんの本は一通り読んでいるので、彼女が表に出している価値観はだいたい知っていたつもり。でも梅原氏は真逆の視点を提供していたのが僕には新鮮だった。

 

本書のメッセージ:学校的価値観からの脱却と人生への納得感 

そんな二人の共通点は、ジブンの頭で考え、ジブンの人生に「納得」しているところ。

そしてこれこそが、対極な立場にいる二人から読者へのメッセージだと思う。

他者からの目を気にすることなく、ジブンの好きなことをして、ああ良かったと言えれば良い人生じゃないの?

 この本の帯に「人生に正解なんて、ない!」とあるけど、正解が無いからこそ、ジブンの人生を生きろと訴えかけている。

 

二人がジブンの人生に納得できているのは、時期の違いこそあれ「学校的価値観」からの脱却に成功しているからだ。

この「学校的価値観」という言葉が本書ではたびたび登場する。

明確な定義はなされていないが、文脈にそって考えると、「公教育の中で、先生の言う通りに行動し、皆と調和を合わせ、勉強を頑張っていい大学に入り、いい会社に入るべきであるという規範」とでも言おうか。

梅原氏は早々に学校的価値観から逸脱している。小学校の時になぜ勉強しなければならないのか?と先生に聞いて、よくしかられたという。「あれしろこれしろ」と命令するばかりで、理由を教えない大人に嫌気がさした。そしてゲームセンターに入り浸り、こちらの道で成功する。(その間、麻雀だったり介護だったり紆余曲折を経ているが)

対してちきりんさんは途中まで学校的価値観の体現者だった。地元の進学校から東京の一流大学に入り、大企業に入社した。その後いろいろあり、匿名ブロガーという学校的価値観から遠く離れた職業?に就いていらっしゃる。彼女自身、学校的価値観からの脱却に多大な時間を要したと話している。

二人がジブンの人生に納得できたきっかけが、この学校的価値観からの脱却のように思える。

なぜ学校的価値観に従ってはダメなのか 

ではなぜ学校的価値観はダメなのか?もしくは、学校で教えられていることを忠実に守っても、人生への納得感が得られないのはなぜか?

それは、時代錯誤の一元的価値観を子どもに押し付け、自分で自分の幸せを考えなくするからだ。

 

時代遅れのロールモデル

まず、学校的価値観の「いい大学に入っていい会社に入る」というロールモデルがもはや時代遅れだ。

高度経済成長期ならロールモデル通りだった。いい大学にさえ入ればいい会社への就職が約束され、いい会社に入りさえすれば年功序列的に毎年給料が上がり、定年後は悠々自適な老後が待っていた。

でも、僕があらためて書くでもなくいろんなところで言われているが、もはや右肩上がりの時代は終わった。大企業だってリストラされる。10年前に、シャープが台湾企業に救済されるなんて誰が想像できただろうか?

僕が就活していた3年前は商社が資源でバンバン最高益をたたき出していた。友達と「商社入ったら10年は絶対安泰だよな〜」なんて真面目に話していたら、たった3年後に大赤字をこいた。

もはや学校的価値観のロールモデルが通用しなくなった。先生の言う通りに勉強がんばって、いい大学入っていい会社に入ることが人生の成功を保証しない。

 

他者との比較による幸せ

そして、学校的価値観への従属は他者からの承認欲求を生み、他者との比較でしか幸せを感じれなくなる。

学校では先生の教えを守り、みんなと同じように行動することを要求される。

「みんな同じ」という強烈な平等感を植え付けられる。

しかし、平等にもかかわらず必然的に差は生まれる。

最初はみんな同じなのに、勉強が得意な子もいれば、そうでない子もいる。いい会社に入れる人もいれば、世間的に評価されない会社に入社を余儀なくされる人もいる。

学校では「偏差値」、会社に入ってからは「年収」でその差が測られる。

この二つの指標が高いことが、学校的価値観で唯一良い人生とされる。

良い人生が定量的に示されるのだから、他者との比較を生み、嫉妬や蔑みに変わる。

「なんであいつの方が良い大学に?」「なんであいつの方がいい年収もらってんの?」

またその逆も然りである。

最初はみんなヨーイドンで一斉にスタートして、同じように走ってきたのに、いつの間にか差が生まれ、それが数値で可視化される。

本当はジブンは何をしたいのか?ではなく、他者よりもより高い指標をたたき出すことが人生の目的となってしまう。ジブンの人生とは何か、ジブンの頭で考えなくなってしまうのだ。

最初から「みんな違ってみんないい」、幸せの指標は一つじゃないと思えれば、気が楽になるはずなのに、である。

 

ちきりんさんと梅原氏は、対極な人生を歩みつつも、学校的価値観から脱却することで、ジブンの人生をジブンで考え、納得している。

「ジブンの人生なのだから、普遍的な正解など無いのだから、ジブンが納得できる人生を生きようよ。」

そんなシンプルなメッセージを投げかけてくれる。

学校的価値観に従って生きてきたのに、人生行き詰まっている人は是非手に取ってほしい。