瀬戸内国際芸術祭2016 誰が得しているのか?
芸術祭開催中に瀬戸内の島々を巡る間、ふと疑問がわき起こった。
「この芸術祭で得しているのって誰だろうか?」
芸術で儲けるなぞけしからん!という意見もあろうが、誰に利益が還元されているのかは気になった。
芸術祭の開催コンセプトらしきものは公式HPに以下の通り記載されている。
海の復権
古来より交通の大動脈として重要な役割を果たしてきた瀬戸内海。行き交う船は島々に立ち寄り、常に新しい文化や様式を伝えてきました。それらは、個々の島々の固有の文化とつながり、育まれ、美しい景観とともに伝統的な風習として今に残されています。
今、世界のグローバル化・効率化・均質化の流れの中で、島々の人口は減少し、高齢化が進み、地域の活力の低下によって、島の固有性は失われつつあります。
私たちは、美しい自然と人間が交錯し交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の 『希望の海』 となることを目指し、瀬戸内国際芸術祭を開催します。
誰が運営しているのか?
では芸術祭は誰が運営しているのだろうか。
瀬戸内国際芸術祭実行委員会なるものがあり、会長は香川県知事、総合プロデューサーは公益財団法人福武財団理事長 福武 總一郎(ベネッセの元社長、現在は最高顧問)らしい。
瀬戸芸の主要な島は香川県だし、そもそも直島にアートを持ち込んだのが福武さんだから、そりゃ納得である。官民連携という形で運営しているのだろう。
利益はどう還元されているのか?
気になるお金の行き先だが、多分そもそも利益出てないと思う。
瀬戸芸は各作品の受付で鑑賞料を支払うが、ほとんどの人が鑑賞パスポートを事前に購入する。これがあれば、いちいち各作品の前でお金を支払う必要がなく、まとめて作品を見れる(※一部作品は追加料金が必要)。テーマパークのアトラクション乗り放題チケットみたいなものだ。
鑑賞パスポートは全国のコンビニで購入できる。売上げは実行委員会が吸い上げ、運営費に回して利益が出た分は島々に分配しているのかもしれないが、そういった記載はホームページにはなかった。
海の復権て何だろ?
はじめにことわっておくが、僕は瀬戸内国際芸術祭を否定するつもりはまったくない。
旅と芸術が好きな端くれとして、島々を巡る旅は楽しく(ONE PIECE世代だし笑)、芸術作品には僕のわずかな感性を刺激してくれた。
ただ、芸術祭が島にどれくらいの恩恵をもたらしているのかは分からなった。
島でランチしたお店は芸術祭開催中のみの営業みたいだったし、店員も島外から来たリア充っぽい連中だった(僻みじゃないけど笑)
瀬戸内の島は宿が少なく、ほとんどの旅行客は高松か宇野に宿泊する。
だから民宿が潤う、ということもあまりなさそう。直島の著名なホテルのベネッセハウスはその名の通りベネッセが経営している。
多くの旅行客は夕方フェリーで高松に戻り、讃岐うどんに舌鼓を打つ。
経済的な観点で、芸術祭が島に貢献しているかどうかは何とも言えない。
そして、直島の人口は1992年にベネッセハウスができて、安藤忠雄設計の地中美術館が2005年に開館した後も減少の一途を辿っている。そもそも、海の復権が人口増加ではないのかもしれないけど。
出所:Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/直島町#.E4.BA.BA.E5.8F.A3)
直島から高松に帰るフェリーに乗っている時、隣にいた島外から来たというボランティアの中年女性がぼやいた。
「芸術祭も、島の人によってはいろんな意見があるのよねぇ・・・」
海の復権って難しい。